小雨が降る中、抗議は文科省の屋外で約3時間にわたって行われ、子どもを抱えた父母たちは、声をからしながら「20msv撤回」を求めて訴えた。しかし、事前に面会を求めていた高木文明文部科学大臣や政務三役は最後まで現れることはなく、前回同様に対応にあたった渡辺氏(文科省科学技術・学術政策局)の煮え切らない応答が繰り返されるのみだった。
詳細はこちらの動画をご覧下さい。
『20ミリシーベルト基準」撤回を〜福島の父母らが文科省に要請行動』
MSCRを代表して参加した私は、涙ながらに訴える福島のママさんに話を聞くことができた。
(1歳の娘を抱えるママさん/福島県郡山市在住)
まわりのママ友たちは、「県の放射線リスクアドバイザーが“大丈夫”って言ったから安心しているんです。私が何度も「万が一のことがあるかもしれないから避難したほうがいいよ」と言っても、耳を貸そうとしてくれません。どうやったら分かってくれるのでしょうか……。私は幸い、今月末に家族と共に避難できることになりました。1歳になる一人娘がいます。本当は、もう一人子どもを産みたいと思っていたけれど、この震災であきらめました。だから、この子だけは元気に育ってほしいんです。何もなければ、「あのときは大騒ぎしたけど、良かったね」で済みます。でも、もし万が一、この子が病気になったりしたら……。私はこの子になんと詫びていいか分かりません。だから、何もかも捨てて避難することに決めたんです。周りのママ友からは、「あなたは避難できるからいいね」と言われました。みんな仕事があったり、ローンがあったりで離れられない。その気持ちも分かります。でも私は、それは言い訳だと思う。子どもの命がかかっているんですよ。何を犠牲にしても避難してほしい。私は避難してからも、福島に残っているママ友たちに避難を呼びかけ続けます。嫌がられても構いません」
(小学生の娘さんを抱えるママ/福島市在住)
4月の末に、娘とふたりで東京の親戚の元に避難してきました。でも、親戚からは理解されずに「福島はそんなに大変なの?」と白い目で見られる始末。もちろん、福島に残してきた夫や親戚たちも、「過剰反応しすぎ」だと思っています。もちろん福島には戻りたいけれど、このままではいつになるか分かりません。いったい、いつまでこんな状態が続くのでしょうか。私たちの生活を返してほしい……」
このママたちは、いずれも目に涙を浮かべながら話してくれたが、その表情には持って行き場のない怒りが表れていた。
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この日の抗議には、海外メディアの記者も取材に訪れていた。その中のひとり、新月通信のマイケル・ペン氏に「海外メディアではどのように報道されているか」と、うかがってみた。
「残念ながら、世界では日本の震災ニュースがあまりに報道されなくなってきています。原発事故や20msvの問題についても、一部の人間は深刻な問題として関心を寄せていますが、多くの人たちは『自分たちのところに放射性物質が飛んでくるのかどうか』といったことを気にしているにすぎない。だから私は、この問題を伝え続けたいと思っています」
また、アメリカの大学から研究に訪れた、という女子大生にも話を聞いた。
「私は大学で心理学を専攻しているので、なぜ日本人がこれほどの大惨事に見舞われても冷静でいられるのか、それを研究したくて来日しました。日本人は、とても素晴らしい精神性を持っていると思います。原発事故に関しては、まだ収束していないだけに、子どもたちのことが心配です」
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今回この抗議に参加して、「MSCRとしてできることは何か?」ということを改めて考えさせられました。「20msv撤回」を求め続けていくと共に、ともすると埋もれてしまいがちなママたちの声を国内外に伝え、少しでも自主避難の後押しができるよう、全国の人たちをつないでいきたいと思います。
文責:和田秀子
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