2011年5月3日火曜日

年間20ミリシーベルトの被爆量が安全だと思っている専門家はいないのに、なぜ文科省で通達されているのか?

「放射能から子どもを守りたい!」と立ち上がった福島県の父母たちが5月2日、『20ミリシーベルト撤回要求のための対政府交渉』を行った。

通常であれば、年間被爆量は1ミリシーベルト以内とされているが、“非常時”ということで、文科省は年間被曝量は20ミリシーベルト以内」と決定した。
これを屋外活動に当てはめた場合、3.8マイクロシーベルト毎時以下であれば活動の制限がなく、それ以上の数値であれば、「1時間以内に制限する」ということになっている。

この数値は、原子力施設などで働く人々が、不要な被爆を避けるために法令で定められている「放射能管理区域」の基準(0.6マイクロシーベルト/時以上)の約6倍にあたる極めて高い数値だ。

いくら非常時とはいえ、人間の体が急に放射性物質に強くなるわけではない。あまりにも緩すぎる年間被曝量に、学校はもちろん父母は大きく困惑しているのだ。
郡山市などは、独自の判断で、校庭の土を除去する除染作業を始めているが、これに対して高木文部科学大臣は、「そんなことをする必要はない」などと発言し、物議を醸している。

■「放射線量を低減するためにあらゆる努力は必要だが、グランドの除線はする必要はない」と文科省

交渉に先立ち、社民党の福島みずほ議員は、次のように発言した。
「文科省が判断基準としているICRP国際放射線防護委員会)は、決して20ミリシーベルトが安全と言っているわけではない。どうしても、その土地を離れたくないという人が、自発的に残っていることを許容する限度が20ミリシーベルトだ。それは認めていただけますね?」

これに対して文科省の担当者は、20ミリシーベルトで良いとは思っていない。あくまで暫定的な数値であり、できるかぎり1ミリシーベルトに近づけるために、あらゆる方策をとらねばならない」と答えた。

しかし、現在、文科省が行っている“あらゆる方策”とは、「3.8マイクロシーベルト以上なら屋外活動を1時間以内にとどめる」ということだけ。

父母のひとりからは、「あらゆる方策をとって低減措置を行わねばならないならば、自治体が独自に除染作業を行うことに対して、ブレーキはかけるな!本来ならば、国が対処しなければならないことだ」と意見が出た。

これに対して文科省の答えは、さらにイライラさせるものだった。
「できることはした方がよいが、除染作業は、しなくても問題はないと認識している。ブレーキをかけるつもりはないが、実行可能かどうかが問題。除染作業をした後の土の処理が問題になるので、その点も含めて考える必要がある」

しかし、文科省担当者のこの発言には大きな矛盾がある。
「3.8マイクロシーベルト以下」が“安全”であるならば、なぜ除染した土の処理が問題になるのだろうか?

 あまりにも不可解な文科省の返答に、参加者たちは、「グラウンドの土は極めて低レベルの汚染のはずだ。なんなら、ダンプカーで文科省にお届けしますよ!」と怒りをぶちまけた。

■「20ミリシーベルトが安全だと言っている専門家はいない」と原子力安全委員

また、続く、原子力安全委員に対する質疑の場面では、「どのような根拠で年間20ミリシーベルトという基準を出したのか」との問いかけに対し、「原子力安全委員会としては、子どもに対して年間20ミリシーベルトを基準にするとは認めていない。可能なかぎり被爆の低減を求めることを絶対の条件としている。それは文科省にも伝えている」と明言。さらに、隣に座っていた文科相の担当者に対して、「文科省も20ミリシーベルトを基準とはしていませんよね?」と、確認するなど、思わず首をかしげそうになるような混乱が見られた。

さらに参加者からは、「現在、福島県の“健康アドバイザー”として講演を行っている長崎大学の山下教授は、『年間100ミリシーベルトまでなら大丈夫』と言っているが、これは安全委員会が言っていることと矛盾しているのではないか?」と質問が飛び出した。

原子力委員は、「それが事実ならば、しっかり対応させていただきたい」と発言。さらに、「20ミリシーベルト以内なら安全だと言っている日本の専門家はいないんですね」との市民の問いかけに、「原子力安全委員が把握している中では、子どもが年間20ミリシーベルト浴びることを許容した専門家はおりません」と明言した。

つまり、どの機関や専門家も、「年間20ミリシーベルトが安全」だとは思っていないにもかかわらず、数値だけが一人歩きしてしまっていることになる。

今回の政府交渉では、少なくとも「(1)年間被曝量20ミリシーベルトは安全ではない」「(2)放射線値を低減するための措置は必要」「(3)健康アドバイザーである長崎大学の山下教授らが言っていることは問題がある」ということが明らかにされたという点で、大きな進展だと言える。

こうした点を認めた以上は、政府には早急な措置を講じてもらいたい。

                             ********

『20ミリシーベルト撤回要求のための対政府交渉』様子は、下記よりご覧いただけますので、ご覧ください。



また、私は当日、交渉に参加してなかったので、細かな点は実際に参加されていたのレポート等も合わせてご参照ください。

福島老朽原発を考える会 (フクロウの会)


脱原発の日ブログ 

カリフォルニア・加州ラジオ草紙

0 件のコメント:

コメントを投稿